とある夏の情景-1


「あ゛〜っ」
梅雨も終わりかけの7月。湿気が暑さを助長して、不快指数は100%を超える勢いだった。
せめて、このレポートが終わっていたら…。
前期末試験の名の下に、揃いも揃ってレポート課題にした、教授達を恨めしく思う。卒業単位は必修以外は足りているものの、将来を考えると、それだけでは足りない。選んだ己が悪いと言われればそれまでなのだが…。
就職活動を始める者も多い、大学三年の夏。
それを配慮しての事なのだろうが、進学を考えている彼には無縁のことだった。むしろ、「進学の為だ!!」と言い放った担当教授より与えられた論文を書き上げなければならない彼には、拷問の様に感じられた。

「せめてうちにこれだけ本があったらなぁ…」
煙草をくわえた口が動く。
煙草が吸えて、たくさんの本がある。それだけ理由で、最近は担当教授の研究室に籠もりきりだ。

三本目のレポートをちょうど書き上げ横を見ると、置いてあった携帯電話が受信を知らせていた。それは同居人であり、恋人である、善法寺伊作からのメールだった。


―今、実習終わりました
留さんのキリの良いとこで連絡下さい(^^)―


まぁ、残りは自宅にある資料で何とかなる…か。

「先生、今日は俺、帰りますよ」
本が高く積まれた机に向かって言った。
「お〜、お疲れさん」
尤も高く積まれすぎてヒラヒラと振った手の指先しか見えないが…。

吸い殻で山を作った灰皿。それだけ長い時間居たらしい。
吸い殻用のゴミ箱へ捨て、残った灰を水で流した。

そして、研究室がある中央棟の真裏にある駐車場へ急いだ。
2011/02/13