とある夏の情景-3
この研究棟には、この大学の文系学部の全教員の部屋が集められている。教授には更に、学部棟にそれぞれ研究室が与えられていて、ゼミなんかはそこで行われるので、大抵の教員は空き時間になるとこの建物のどこかにいる。
法学部のフロアは最上階と1つ下の2フロアで、その2つのフロアも更に、法律学科と政治学科で二分されている。留三郎の所属する法律学科は最上階のため、あまり足を運ぶ学生はいない。
(だからこそ勉強部屋にちょうど良いんだよなぁ)
エレベーターに乗り込み、今日のこれからについて考え始めた。
レポート類の〆切日から逆算すると、今晩はゆっくりしても良さそうだ。伊作も今日で実習終わって、明日は休みだし、久しぶりに酒でも用意するか。
そんな事を考えてると、エレベーターが止まり、人が乗り込んできた。
「留三郎〜♪」
短くボサボサで藍色の様な黒髪の青年は気さくに声をかけてきた。
「小平太、お前も来てたのか」
呼び出しか??と聞くと、少しムクレて「私はレポート出しに来たんだ」と答えた。
小平太とは、学部こそ違うが1年の時に教養ゼミで一緒になって以来の付き合いだ。
「留三郎は、また引き籠もってたのか??」
(あ〜、小平太にしたら勉強することが引き籠もりになる…のか)
「まぁな」
「いさっ君は??」
「今日まで実習」
「なら今日呑もう」
「そうだなぁ…ってお前良いのかよ??」
「何がだ??」
「いや…来週からリーグ戦…」
「ま、細かいことは気にするな」
この思い切りの良さというか、乱暴な影響力を揶揄して『暴君』と呼ぶ者も少なくない。
本人には悪気がないのでこちらも憎めない。そんなやつだ。
いろいろ話しているともう駐車場まで来ていた。
留三郎の車の横には黒い大きな車が少し曲がって駐車されていた。
車高を低くしている愛車が更に小さく見える。
「こへ…相変わらずだな」
「ん??何がだ??」
「あれ、学生が乗るもんじゃねぇって…」
指差した先にある車は、真っ黒いアルファード。
金額からして、新車なんて普通の学生には到底手が届くようなものではない。
「そうか??」
父から貰ったものだしなぁ。と言いながらポケットの中の鍵を探している。
「とりあえず、19時くらいに留三郎の家に行くわ」
「そうしてくれ」
そう伝え、互いの車に乗った。
2011/02/13
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